富山県

とやまデザイン・トライアル〔大学連携デザイン人材マッチング事業〕(2016年〜継続中)

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デザインを学ぶ学生と富山県内のものづくり企業を結ぶ、人材育成・人材確保のための取り組み。

富山県総合デザインセンターが主催する「とやまデザイン・トライアル〔大学連携デザイン人材マッチング事業〕」では、富山県内の伝統工芸・ものづくり企業や県内外のデザイン系大学と連携し、学生から商品開発に向けたアイディアなどを提案してもらうワークショップを実施しています。大学生にとっては実際に将来のキャリア形成に向けた学びの機会となるとともに、富山県内の企業や県全体のものづくりの魅力を知ってもらい、人材確保につなげることを狙いとしています。弊社は、この事業の企画・運営をサポートしています。

背景

富山県は、伝統工芸産業と先端技術産業両方の産業資源を有し、それぞれが次世代に産業をつないでいくための革新的な挑戦を行い、各社独自の製品づくりを行っています。

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能作での工場見学(2017年長岡造形大学)

このような風土のもと、富山県総合デザインセンターは、富山から発信するデザインムーブメントとして、「富山デザインウエーブ事業」(1990年〜)を主軸活動として実施するほか、県内のものづくり企業がデザイナー等と連携して現代の暮らしに合った商品開発を進めるための、様々な支援活動を実施してきました。

取り組みを続けるなかで、デザインの重要性を認識する企業が増えるなか、実際に成果をあげている企業は外部デザイナーとの窓口となるデザイン人材が社内に存在するという特徴がみえてきた一方で、学生の就職意識は大企業やフリーランス志向が多く、特に中小企業ではデザイン人材の確保が難しいという課題をもっています。

以上のような状況を踏まえ、当事業は、産学官(富山県総合デザインセンター/大学/県内企業)の連携を深め、県内企業内部にもデザイン系学生のUIJターンなどの人材を確保していくため、2016年度から実施されました。

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ワークショップでの提案発表(2018年京都工芸繊維大学)

弊社は事業開始当初から企画のサポートに関わり、デザインセンターとともに個々の会議・ワークショップ等の運営に携わっています。

実施内容【2016年】

1. 国内デザイン系大学教員とのネットワーク形成

初年度である2016年度は、国内デザイン系大学教員とのネットワーク形成を目的とし、東京・富山での会議および富山県内企業の視察を行いました。
会議では、デザイン人材の育成やキャリアをサポートする上での課題や施策案などについて意見交換を行いました。

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2. 富山大学芸術文化学部 × 助野(株)

また、レッグウェアメーカーの助野(株)と富山大学芸術文化学部と連携したワークショップを行い、助野の製品の1つとして出すことを想定したギフト靴下の制作を行いました。実際に助野のデザイナー・プランナーのアドバイスを受けながらデザイン提案を行い、助野高岡本社の編機で試作。売り方や具体的なターゲットも想定し、コマーシャル動画もあわせて試作しました。

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実施内容【2017年】

翌2017年は、前年の教員の方々との会議で出た意見やアイディアも参考に、3つの大学と連携しました。

1. 武蔵野美術大学造形学部 × 高岡銅器企業

武蔵野美術大学造形学部との連携では、高岡銅器企業の協力を得て、真鍮鋳物のプロダクト制作を実施しました。

授業を通じて職人の方々との交流を行い、伝統工芸に対する理解を深めるとともに、新たな働き方の可能性として視野を広げていってもらうことを狙いとしました。大学側・学生にとっては、デザインとモックアップ提案に終わらず、通常なかなか扱うことがない「金属」という素材に向き合い、実際のプロトタイプで仕上げる貴重な機会となりました。

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ワークショップでは、事前の講義でのコンセプト立案・デザイン提案から、その後高岡市での企業視察を経て、富山県総合デザインセンターに隣接する工房にて実際に鋳物の制作を行いました。地元の職人の方々の協力のもと、学生たちは絞り込まれた提案について、砂型による鋳物作り、研磨や着色などの表面仕上げの工程を体験しました。

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2. 富山大学芸術文化学部 × (株)山田写真印刷所

また、富山大学芸術文化学部と連携したワークショップは、2017年は高級美術印刷として国内で高い評価を受ける(株)山田写真印刷所と協働。

企業・プロのデザイナーの直接指導のもと、「富山を包む」をテーマに、富山県美術館のミュージアムショップで使用される想定で包装紙のデザイン提案を行い、そのうちの5案を実際に印刷しました。

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さらに5案の包装紙を富山県美術館のミュージアムショップに展示し、人気投票やワークショップも行い、学生が直接エンドユーザーの声を聞く機会も設けました。展示では、単に包装紙を置くだけでなく、立体物や背景の物語等、さまざまな付加価値をつける学生の工夫が見られました。

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3. 長岡造形大学 富山県企業見学会

長岡造形大学との連携においては、全学生数の1割が富山県出身者で、その多くがUターン就職を希望していることから、富山県企業の見学会を実施しました。
学生が各企業の業務内容について直接話を聞き、職場の様子を見学することで、県内企業とデザイン系学生のマッチングをより促進することを狙いとしました。

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また、今後富山県企業への就職を希望する学生等に配布することを目的とし、今回のバスツアーの内容をまとめたパンフレットを制作しました。

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4. 東京都内での成果発表会

2017年度は、ここまでの成果発表と今後の産学官連携による人材育成の新たなスキームについての座談会を開催。東京・赤坂にある武蔵野美術大学デザイン・ラウンジにて、一般公開にて実施しました。

デザインセンターの取り組み紹介のほか、各大学のみなさんから産学官連携事業の事例を発表いただきました。

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座談会では、「企業が求める人材像と大学の人材育成の現状」をテーマに、登壇された先生方やデザインセンター所長、日本デザイン振興会の方ほか、会場からもご意見を多数頂戴しました。

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実施内容【2018年】

3年目となる2018年は、4つの大学と連携しました。

1. 金沢美術工芸大学 × (株)ウイン・ディー

金沢美術工芸大学との連携では、鋳金を学ぶ学生がデジタルによるものづくりに挑戦しました。

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富山県総合デザインセンターの職員が講師となって2D・3Dによる図面制作を実習したのち、学生のみなさんが各々制作した図面から1点を選び、富山県でモックアップ製作を得意とする(株)ウイン・ディーにて試作品製作を行いました。

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ワークショップでは、将来的な活躍の場として富山や富山のものづくりに興味を持っていただくことを目指し、県内のものづくり企業3社も見学しました。

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2. 京都工芸繊維大学 × 井波彫刻協同組合

京都工芸繊維大学との連携では、「工芸の深化」をテーマとして、学生と職人が伝統産業界の抱える課題に共に取り組むことを目指しました。

その伝統産業とは、江戸時代中期を起源とし、富山県南砺市で連綿と受け継がれる伝統工芸「井波彫刻」。

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現地視察や彫刻体験、井波彫刻協同組合のみなさんとのディスカッションを経て、学生のみなさんは「井波彫刻のブランディング」「井波彫刻総合会館の展示計画」「井波彫刻のプロダクト」の3つの課題を抽出し、各チームに分かれて提案に取り組みました。

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3. 富山大学芸術文化学部 × 助野(株)

富山大学芸術文化学部との連携では、2016年度に続き二度目となる助野(株)とのワークショップを実施しました。

同社の人気商品「Plus-ONE」(ギフト用靴下)のデザイン提案を行い、うち8案をさらにチームに分かれてブラッシュアップし、試作品を製作しました。

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このワークショップではデザインのコンセプトや色・形だけでなく、パッケージデザインや具体的なターゲット、売り場にも言及して提案するため、前回同様、靴下の試作・30秒のコマーシャル動画を製作するとともに、今回は靴下のパッケージも実際に試作を行いました。

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4. 法政大学デザイン工学部 ×(株)能作 × (株)ナンゴー

法政大学デザイン工学部とのワークショップは、「産業シーズを発展させたプロダクトとデザイン開発」をテーマとし、協力企業の素材・工法を用いた商品のデザインとブランディングを行いました。

今回の協力企業は、真鍮や錫製の生活用品を製作する鋳物メーカーの(株)能作と、ロートアイアン・ロートアルミ製品を中心にインテリアやエクステリア商品を製作する(株)ナンゴーです。

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学生のみなさんは協力企業ほか県内のものづくり企業を見学したのち、プロダクトデザインとブランディング提案の作成を行いました。

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その後提案をブラッシュアップし、3Dデータを製作。そして、協力企業にて試作品を製作しました。

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ただ商品をデザインするだけにとどまらず、ブランドネーム、ブランドロゴについてもあわせてデザインし、見本市や店頭での配布を想定したリーフレットも制作しました。

5.成果発表会

2018年度の成果発表会は、東京・紀尾井町にあるヤフー(株)のオープンコラボレーションスペース「LODGE」で開催しました。

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富山県総合デザインセンターからの事業説明のほか、京都工芸繊維大学・法政大学の代表のみなさんにより、それぞれの取り組みについての最終プレゼンテーションを実施。会場には、この2大学の試作品のほか、金沢美術工芸大学・富山大学の試作品も展示しました。

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また、会の後半では登壇者や参加者全員で円になって座談会を行いました。学生のみなさんから取り組みを通じての感想を聞くとともに、協力企業・団体のみなさんや、各大学の先生方からも意見・感想などをいただきました。

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6. 冊子制作

2018年度は、当事業の今年度の取り組みをまとめ、関係者や当事業に関心のある方々に配布するものとして、16頁の冊子も制作しました。

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アンケートより

当事業に参加された、学生・教員・企業のみなさんの声を抜粋します。

<学生>

・東京で行われている展示やイベント、企業などに足を運ぶ機会はありますが、地方のものづくりについて知る機会が少なかったので、実際の作業風景を間近に見ることを通して現地のものづくりについて知ることが出来てよかったです。
・データ作成を行い、試作、本試作と一連の流れを踏むことで仕事の疑似体験ができたことが印象的でした。
・富山県や富山のものづくりに関して、地域全体でものづくりを盛り上げようと様々な取り組みをしていることが印象的でした。富山県総合デザインセンターの設備を始め、(株)能作の地域活性のための取り組みなど、地域とものづくりをする人たちがお互いに協力関係を築いているのが良いなと感じました。また今回のワークショップを始め、地域あるいは世代を超えて巻き込んでいこうという姿勢に、今後どのように発展していくのだろうと胸を膨らませました。

<教員>

・今後の工芸は、ある部分において、インターネットにつながるIoTやAIを使いこなす、より横断的な多様化とイノベーションが求められる時代となります。その意味で今回の共同授業は、学生にとって新たなテクノロジーや多様なアイディアの体現の場として幅広い視野の獲得と実践的な経験となりました。
・この事業は、例年実施するゼミの課題を、企業・行政の協力のもと現実的な条件で体験できるすばらしい機会と考えました。学生たちは生産現場を訪れ、実際の工法による試作品を手にしたことで、クラフツマンシップのすばらしさ、そして改めてプロダクトデザインの面白さを感じたと思います。

<企業関係者>

・ これまで考えもしなかった新商品や展示等のアドバイスを沢山いただき、今後の参考になることが多く非常に有意義な時間でした。
・ 他社様と大学との連携を元に1つのモノ作りをすることは時間と労力を使いますが、学生らしい発想と企業側の商品開発に対する意識のすり合わせを行うことにより、また新たな商品価値が生まれたと感じました。

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